前回までに、基本給の構成は基礎生活給と職能給に分け、基礎生活給は全社員一律の金額とし、職能給部分だけ人事評価によって昇給(場合により降給)させるということを説明しました。
そこで今回は、職能給を昇給させるルールについて説明します。
職能給の昇給の根拠は人事評価によることは間違いのないところです。人事評価の手順については、評価制度についての解説で既に示したところですのでここでは触れませんが、人事評価の結果、各社員に割り当てられた評価ランクに昇給を連動させる仕組みとするのが良いでしょう。
評価ランクの段階は、「人事制度の構築(11)」で示した通り、「SS・S・A・B・C」の5段階とします。標準がAで、その定義を示せば、「会社が期待する水準の能力を保有している」といった表現となります。つまり、評価ランクがAの人は、会社が期待する能力開発が実現されていることから、その見返りとして同一等級内の職能給テーブルを1号俸昇給させましょう。或いは、評価ランクAの人は号俸据え置きとすることも一案ですが、期待する能力水準を満たしていることから、ここは是非昇給させたいところです。
また、評価ランクがSまたはSSの人は会社が期待する水準以上の能力開発が実現していることから、Sの人は2号俸昇給、SSの人は3号俸昇給としましょう。ただし、評価ランクAを号俸据え置きとした場合は、Sで1号俸昇給、SSで2号俸昇給となります。
逆に評価ランクがBまたはCの人は、会社が期待する能力が身についていないことになりますので、Bの人は号俸据え置き、Cの人は奮起を促すために1号俸降給としましょう。ただしここでも、評価ランクAを号俸据え置きとした場合は、Bで1号俸降給、Cで2号俸降給となります。
5段階の評価ランクと、号俸の増減の関連性は各企業の事情によりますが、評価ランクAを昇給とするか据え置きとするかによって、全社的な人件費の増減に大きく影響します。筆者の見解では、下位の等級では評価ランクAは昇給とし、上位等級では据え置きとするといった区分けがあってもよいと考えます。ただし、昇給から降給に連続性がある基準とすることが重要であり、そのためには号俸間の金額差は一定にしておく必要があります。
以上が標準的な職能給昇給のルールです。