前回に続き、今回も管理職層の月例給について考えます。
繰り返しになりますが、複線型人事制度の展開においては、管理職層は下の図の通りマネジメント職とスペシャリスト職に分けて運用します。
そして、それぞれの月例給は、全社員共通の基礎生活給に、M1~M3等級とS1~S3等級のそれぞれについてのシングルレートの役割給と、更に役職に応じた役職手当を加えた構成とすることを前回の人事制度の構築(29)で説明しました。
例えば、マネジメント職であればM1等級からM2等級、M3等級への昇格と、課長から部長への昇進を組み合わせた月例給の構成は次の図のようになります。
スペシャリスト職であれば、S1等級、S2等級、S3等級に置き換えた役割給と、専門課長、専門部長に置き換えた役職手当で構成されます。
この図の通り、管理職層においては一般社員にあったような人事評価による号俸の昇給はなく、役割や役職が変わらない限り月例給は変動しません。逆に言えば、人事評価にかかわらず、人事異動によって役割給や役職手当が変動することもあり得ます。
ただし、管理職層は成果責任を問われる立場ですので、各年度の人事評価の結果は賞与の査定に大きく影響する仕組みとしましょう。賞与制度については改めて解説します。
ところで、複線型人事制度における管理職層の月例給の構成を考えるうえで悩ましいことは、マネジメント職とスペシャリスト職で金額に差をつけるかどうかということでしょう。
これは複線型人事制度の運営にもかかわることです。というのは、マネジメント職は組織規模に応じて人数はおのずと制限されますが、スペシャリスト職は企業の考え方によっては規模と処遇が違ってきます。
本来、スペシャリスト職はその分野の第一人者として位置づけられる人に限定すべきであり、処遇はマネジメント職同等あるいはそれ以上の金額とするのが良いでしょう。ただし、スペシャリスト職をマネジメント職に任命できなかった人の受け皿として位置づけるようなケースも現実にはあり、このような場合に処遇が同等ではマネジメント職から不満の声が出ます。かといって、スペシャリスト職を低く処遇した場合は、業界を代表する専門知識を持っているような人のモチベーションに影響します。
スペシャリスト職の位置づけについては、各企業で慎重に検討し、処遇を決定するのが良いでしょう。