前回までは、一般社員層の月例給与の構成について解説してきました。今回は、管理職層の月例給与について考えます。
複線型人事制度を展開するうえでの体系図は、下の通り管理職層を「マネジメント職」と「スペシャリスト職」に分けて運用します。
マネジメント職の役割は組織のマネジメントであり、人・物・金等の経営資源を投入し、組織目標達成に導きます。一方、スペシャリスト職の役割は、特定の分野についての高度な専門的知見を企業価値向上のために発揮することにあります。
体系図からも明らかな通り、これらの管理職層は一般社員層の上位に位置し、一般社員層に求められる職能要件は既に満たした存在と言えます。つまり、管理職層の月例給与の構成は、一般社員層のものとは異なってきます。
まず、管理職層の月例給与においても、一般社員層で設けた基礎生活給(「人事制度の構築(23)」参照)は同様に組み入れます。基礎生活給は全社員共通の基本給の一部です。
次に、一般社員層で設けた職能給に替えて役割の重さに応じた役割給を設定しましょう。職能給のように人事評価によって号俸を段階的に昇給する仕組みではなく、上の図のM1~M3等級と、S1~S3等級のそれぞれについて、役割給をシングルレートで設定します。例えば、M1等級の者はその等級に滞留する間は役割給の昇給はありません。M1等級の役割を充分に果たし、M2等級の役割を全うできると経営レベルでの判断がされたときに、M2等級に昇格できる候補となり、実際に昇格したときに昇給が伴います。
更に、管理職層には役職に応じた役職手当を支給するのが良いでしょう。上の図では、マネジメント職においては、M1等級とM2等級には課長の役職を、M2等級とM3等級には部長の役職を当てはめています。組織の規模にもよりますが、副部長や次長という役職を置くことも可能です。ただし、M1等級の部長とM3等級の課長が出現するような役割と役職、更には月例給与額が逆転するような組み立てはしないでください。
以上の通り、管理職層における月例給与は、基礎生活給と役割給に役職手当を加えた構成とすることが良いと考えます。
次回も管理職層の月例給与につい考えます。