前回、労働基準監督署から調査の通知があった際の準備について説明しました。今回は、監督官が来社する調査当日の対応について解説します。
前回示した通り、指定された書類等は紙に出力し、インデックスなどを付けて見やすいようにファイリングしておきます。周りの社員が調査の様子に気を取られることもあるので、オープンスペースではなく会議室を用意しておきましょう。
調査に対応する人事課長等の責任者や実務の担当者の心構えとしては、何か指摘を受けるのではないかとビクビクするのではなく、労働安全衛生行政を理解し、積極的に協力している姿勢を強調し、法令に基づいた日頃の取り組みを自信をもって説明しましょう。一方で、理解不足によって間違った対応をしている部分もあるかもしれないので、そのような点があれば指導を仰ぎたいといった謙虚な姿勢も必要です。
労働基準監督署の調査の目的は、法令が遵守され、労働者の権利が保護された職場環境を守ることにありますので、調査に対する会社側の対応姿勢は、その目的が達成された職場かどうかを明確に表しています。その意味では、前回示した通り、調査の冒頭に人事担当役員等経営レベルの者が挨拶をすることは大きな意味があります。会社全体で労働者の権利保護と職場環境の改善に取り組んでいるということを示すことができます。
ところで、労働基準監督署の調査には、大きく分けて「定期監督」と「申告監督」の二種類があります。
定期監督とは年間の計画に基づいて定期的に行う調査です。業種を絞って調査したり、事業所の規模を絞って調査することもあります。
申告監督とは、労働者やその関係者から法令違反等の疑いの相談があった際に実施される調査です。
申告監督の場合は、監督官がある程度の情報を持っていて、調査の対象を絞って調査しますので、会社側もそれに応じた対応が必要になります。調査の流れでどちらの調査かはある程度予測できますが、調査が始まる前に定期監督なのか申告監督なのかを監督官に確認すると良いでしょう。
もっとも、労働者側の法律や規程の理解不足で事なきを得ることが多いのですが、万が一会社側に対応の不備があった場合には、上に書いたように監督官の指導を仰ぐ姿勢を示すことが重要です。
次回、調査においてよくありがちな指摘事項について解説します。
