人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を的確に解決します

152.裁量労働制適用下の36協定

前回、裁量労働制について触れましたので、今回は実務上盲点になりがちな裁量労働制と36協定との関係について考察します。

繰り返しになりますが、裁量労働制は特定の職種について、1日につき実際に働いた時間にかかわらず、労使であらかじめ取り決めした時間(みなし労働時間)働いたとみなす制度です。制度上は実労働時間の把握が不要ですが、深夜や休日に働いた場合は別途割増賃金の支払いが発生することや、労働安全衛生法上の健康確保措置の観点からも、実労働時間の把握が必要になります。

みなし労働時間を何時間とするかは労使の判断に委ねられていますが、上記で把握した実労働時間との乖離が大きければ、労働基準監督署の調査で指導を受けることが多い事項です。仮に、1日あたりみなし労働時間を8時間以内で取り決めすれば36協定の締結は不要ですが、実際には8時間以上働くことが常態化していれば、割増賃金は支払われないまま長時間労働となり、連合が懸念する「定額働かせ放題」となります。

しかしながら、実労働時間を考慮してみなし労働時間を取り決めしようとした場合、36協定との関係が問題となることがあります。

36協定で取り決めできる時間外労働時間の上限は、原則として月45時間、年間360時間です。1箇月の平均稼働日数を20日とすれば、1日あたり9.5時間労働(時間外労働1.5時間)で年間360時間に達します。つまり、裁量労働制を適用した場合で、みなし労働時間を8時間超に設定する際には、原則として1日あたり9.5時間が限界ということです。みなし労働時間を実労働時間に近づけて取り決めする場合は、36協定との関係を考慮する必要があるのです。

更には、みなし労働時間を1日あたり10時間で取り決めするとすれば、同様に1箇月の平均稼働日数が20日であれば時間外労働は月40時間、年間480時間となり特別条項が必要な段階に達します。

みなし労働時間と実労働時間は別物ですが、労働基準監督署からの指導を受けたり、労働組合との協議をまとめるためには、実労働時間を考慮して協定を結ぶ傾向にあります。

裁量労働制は労働時間と成果が比例しない専門業務に適用される制度で、「業務遂行の手段や時間配分を大幅に労働者の裁量に委ねる」という特徴を考慮すると、現状の36協定の原則的な適用についても見直しが必要だと感じています。

 

人事・労務ランキング社会保険労務士ランキング

スポンサーリンク