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151.裁量労働制の見直し議論の是非

先日の高市総理による施政方針演説では、「裁量労働制の見直し」について言及されました。一方で、連合の会長は「長時間労働を招きかねない」として反対の立場を強調しています。

しかし、筆者はこの双方の意見の対立はかみ合っていないと感じています。

高市総理による昨年の国会答弁での「収入を増やしたいのに規制があるため残業できない人がいる」という趣旨の発言は、働く意欲がある人の選択肢を広げるための「働きたい改革」だとされています。

この「働きたい改革」は、36協定で特別条項を設けても、残業時間を月100時間未満、年720時間までとする制限を緩和することに他なりません。つまりは、連合会長が懸念するように、長時間労働を助長することになりかねませんが、裁量労働制が直接影響しているわけではありません。

裁量労働制はデザイナーやシステムコンサルタントなどの20の専門職や、本社での企画、調査、分析業務に従事する労働者に適用され、実際に働いた時間にかかわらず、予め取り決めした時間働いたとみなす制度です。これらの職種に従事する労働者には、業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分について使用者が具体的な指示をすることがそぐわない業務であることが前提となりますが、裁量労働制が直ちに長時間労働につながるわけではありません。

ただし、成果を求められる専門職であることから、その過程において労働時間が長くなることはありますが、押し付けられた長時間労働ではなく、専門職としての自覚とやりがいをもって働いた時間であるべきです。逆に言えば、やりがいがなく押し付けられて長時間労働が起きているのであれば、それは裁量労働制が適用される業務ではないということになります。

今回の裁量労働制の見直しの内容は、裁量労働制の適用業務の拡大にあるとみられています。現在認められている業務に限らず、今後追加される業務においても、本来の趣旨に合致した業務に従事する限りにおいては、裁量労働制は日本の技術力や経済力を高めるために有効な制度だと思います。

しかし、現実的には裁量権がないにもかかわらず裁量労働制が適用されている労働者も存在し、連合会長が言うように「定額働かせ放題」となることが問題なのです。高市総理と連合会長との意見の相違は、理想と現実のギャップによって起きているのでしょう。

 

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