人事労務の「作法」

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087.人事制度の構築(28) 職能等級昇格のルール

前回は、同一職能等級内での昇給のルールについて説明しました。今回は、上位の職能等級への昇格のルールについて考えます。

職能等級制度における昇格基準は、一般的には「卒業方式」と「入学方式」があります。卒業方式とは、現在の職能等級で要求される職能要件を満たしたときに昇格させる方式です。一方、入学方式とは、上位の職能等級で要求される職能要件を満たせると判断されたときに昇格させる方式です。筆者の見解は、下位等級では卒業方式を、上位等級では入学方式とするのが良いでしょう。

具体的な例で示します。

一般社員層を1等級から5等級の5段階に分けた場合、1等級から2等級への昇格と、2等級から3等級への昇格は卒業方式です。昇格のタイミングは、前回説明した昇給ルールに基づき、各等級の賃金テーブルの最上位の号俸に達したときに昇格とするのが理論上説明しやすいでしょう。昇格審査を厳しく行うのであれば、このタイミングで昇格試験を実施したり、直属の上司の推薦を求めても良いでしょう。

ただし、飛び抜けて優秀な社員の場合、最上位の号俸に達する前にでも部門長の推薦を要件として、経営レベルで承認すれば「飛び級」で昇格できるルートも作っておくべきでしょう。

一方、3等級から4等級への昇格と、4等級から5等級への昇格は入学方式とします。上位の等級になると、求められる職能要件も厳しくなり、昇格後にその等級で能力が発揮できるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。下位等級のように最上位の号俸に達すれば昇格という基準はありません。上位の等級で能力が発揮できると判断されたときに昇格の対象となります。特に5等級は管理職手前の等級ですので、近い将来管理職として能力発揮できるかどうかを見極める必要があります。5等級に昇格したけれども、管理職には昇進できず、長期間5等級のまま滞留するという状態は避けたいものです。

入学方式とする上位等級への昇格には、「入試」に該当する昇格試験は必須です。その他、面接や部門長推薦を加えても良いでしょう。

以上により、10年余り経過した頃には同期入社であっても管理職候補となる5等級に達した人と、3等級で滞留している人が出現し、年功に偏らない運用が可能となります。

 

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