今回は「人事制度の構築(25)」に引き続き、職能給テーブルの設定手順について解説します。
職能給テーブルを設定する際には、同一等級の中で号俸に応じて賃金レンジを設けた「レンジ方式」のテーブルとすることが一般的です。賃金レンジとは職能給の下限額と上限額の間の金額幅のことです。
同一等級内の職能給金額を同一とする「シングルレート方式」のテーブルも存在しますが、昇格しない限り昇給はないため、成果主義の人事制度との親和性が高いテーブル方式で、能力主義の人事制度には馴染み難いでしょう。
レンジ方式の職能給テーブルを設定する場合、その賃金レンジの組み立て方には、「重複型」、「接続型」、「開差型」の3パターンがあります。
重複型は上下の等級間で賃金レンジが重なっている構成です。通常は下位の等級の賃金レンジを上に伸ばすことで重複が生じるもので、下位の等級で滞留する人の昇給範囲を確保するためのものです。しかし、上位の等級の下位号俸の人と職能給金額が逆転することもあり、職能要件と賃金額が連動しないこととなり、この形のテーブルの運用は行き詰るでしょう。
逆に上下の等級間で賃金レンジが離れているのが開差型です。重複型のような職能給金額の逆転現象は起きず、また昇格へのインセンティブとしては効果がありますが、昇格に伴う昇給額が大きくなる傾向があり、人件費の予算管理上の問題が生じます。業績の悪化により人件費を抑制せざるを得ない状況になった場合、昇格を制限するという人事制度運用上、本末転倒な事態にもなりかねません。
よって、重複型、開差型の問題を解消するためには、賃金レンジは接続型とすることが良いことは、「人事制度の構築(22)」で示した通りです。
運用においては、一般的な社員は等級内の賃金レンジの上限に達した段階で昇格要件を満たしていれば昇格させることで職能給金額が連続します。昇格できずに滞留する場合は、職能給は据え置きとなります。能力の伸長が著しい社員は、賃金レンジの半ばで上位等級に昇格させることで相応の昇給額が確保でき、インセンティブ効果が実現します。
以上の通り、職能給テーブルの設定においては、能力段階に応じて賃金額が連動するように、またそのことを社員に明確に説明できるように運用方法も考えて構築することが重要です。