人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を的確に解決します

165.退職金制度の近代化に向けて

大企業を中心に退職金制度を見直す企業が増えています。

退職金制度がある企業の割合は75%程度ですが、大企業ほど導入率が高いことから、見直しを行うのも大企業中心です。また、退職金は終身雇用を前提とした古くからの制度を継続してきた経緯から、昨今の大企業における賃上げに伴う人事給与制度改定の範疇外となることが多く、最近ようやく見直しの機運が高まってきたのでしょう。

しかし、過去の投稿(145.人事制度の構築(35) 退職金も賃金の重要な一部です - 人事労務の「作法」)に記載した通り、退職金も賃金の重要な一部と考えますので、単純に賃上げ原資を確保するために退職金の支給水準を引き下げるといった、安易な制度見直しは避けるべきです。

大手総合商社の子会社でも、「退職一時金廃止」という見出しでニュースになっていました。一見、退職金制度を廃止したかのように思えますが、内容を見ると、従来「退職一時金」、「確定拠出年金」、「確定給付年金」が3分の1ずつの3層になっていたところを、退職一時金を廃止し、賃上げ原資と確定拠出年金の掛金に振り分けたというものです。非常に合理的な改定でしょう。

筆者が提案する退職金制度の構成は、(148.人事制度の構築(37) 退職一時金と確定拠出年金の組み合わせ - 人事労務の「作法」)に記載した通り、給付額が確定している部分と個人の運用成果次第で変動する部分の組み合わせが良いと考えています。

ニュースになっていた企業では退職一時金と確定給付年金で給付が確定している部分が重複していることから、一方を無くすという選択は賢明でしょう。

企業業績が好調で、賃上げできる環境が整っている大企業ならば、今まで手を付けられなかった古い退職金制度を見直す良い機会でしょう。賃金の後払いではなく、企業独自の考え方を反映した退職金制度に近代化させるチャンスです。

ただし、往々にして退職金制度の改定で一番不利益を被りがちなのは、定年間際の高齢者です。制度改定には各年代別に丁寧な説明と、経過措置等を設けることが必須です。この企業でも退職一時金を廃止しても、過去勤務部分については退職時に一時金で支給したり、確定拠出年金の掛金の割引率を考慮したりなどの対策を講じたようです。

入社する企業を選択する基準や働き方が多様化する今、社員を処遇する総合的な仕組みの一部分として、大企業に限らず中小企業においても、退職金制度を近代化させる良い機会なのかもしれません。

 

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