裁量労働制に関して新たな情報が公表されました。
全国労働組合総連合と労働法制中央連絡会は、先ごろ裁量労働制の実態調査結果を公表し、「裁量労働制を廃止すべき」との結論を示し、4万件余りの署名を国会に提出したというものです。高市政権が進める裁量労働制の適用範囲の拡大を含めた見直し方針に完全に逆行する内容です。
実態調査によると、業務の遂行方法や時間配分などに裁量がないにもかかわらず裁量労働制が適用されていたり、実際の労働時間がみなし労働時間よりも長くなっていることが裁量労働制を廃止すべきとする理由のようです。
しかし、これは裁量労働制が問題なのではなく、その運用が問題なのです。過去の投稿(151.裁量労働制の見直し議論の是非 - 人事労務の「作法)にも記載しましたが、政府の見解と労働者団体の見解の認識の相違から起きているものだと考えられます。
日本の年間労働時間の平均は、バブル期には2000時間を超えていたものが、法整備の影響や非正規労働者の増加もあって、直近では1600時間程度まで減少しています。ただし、問題なのは時間の長短ではなく、時間に応じた労働生産性が発揮できているかということです。少なくとも労働時間自体は減っていることは間違いないのですが、労働生産性の面で欧米諸国に比べて見劣りします。
その原因の一つは、新卒一括採用し、複数の部署を経験させ、社内でしか通用しないゼネラリストの育成に力を入れてきたことが要因でもあります。裁量労働制は適用範囲が専門的な業務に限定され、その目的に合致した職種に従事する専門職に適用する限りにおいては、労働生産性を高めるのに役立つ制度です。
課題としては、みなし労働時間の設定を8時間以内で協定を締結し、時間外労働相当の手当てを支給しない仕組みとしている企業が多いことです。「定額働かせ放題」と言われるのはこのためです。
専門的な研究や調査を行うためには、ある程度の時間的な余裕が必要となるので、みなし労働時間を1日9時間程度に設定し、一定の時間外労働を見込んだ手当を支給することで、その研究などに対するモチベーションを喚起する取り組みが必要です。
昨今の賃上げは、新卒社員の初任給のアップが注目されがちですが、日本の労働生産性を高めるための専門知識を持った労働者を育成するためには、裁量労働制を上手く活用することが重要ではないかと考えます。