前回まで数回にわたり、公的年金を利用した老後資金の増やし方について解説しました。ただし、会社員にとっては、60歳以降も働き続けること以外は、国民年金の任意加入や付加年金など適用対象外の制度です。
そこで今回は、会社員にとって有利な制度についてご紹介します。
一つは社会保険の「同日得喪」という手続きを行うことです。
同日得喪とは、60歳以降に定年を迎え再雇用される際に給与が下がる場合、「社会保険の被保険者資格の喪失と新たな被保険者資格の取得を同日に行う」手続きのことです。通常は、給与が大きく下がった際には、その状態が3ヶ月継続してから社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険)が改定されますが、同日得喪の手続きを行うことで、社会保険の扱いは一旦退職してその翌日に再入社したものと見なされ、社会保険料が再雇用の月から改定されます。
例えば定年前の給与が40万円で再雇用後の給与が20万円のケースで比較すると、定年前の社会保険料月額は約6.1万円で、再雇用後は約3万円です。同日得喪の手続きを行わなければ、6.1万円から3万円に減額するのが4ヶ月目ですが、同日得喪を行えば初月から切り替わり、その差額は約9.3万円になります。同日得喪を行うことで、65歳以降の老齢厚生年金の額がごく僅かに減額しますが、メリットの方が大きいでしょう。
もう一つは、雇用保険の「高年齢雇用継続基本給付金」を受給することです。
高年齢雇用継続基本給付金とは、60歳以降継続勤務する人の給与が60歳時点に比べ75%未満に低下した場合、最大で再雇用後の給与の15%相当の金額が支給される制度です。(2025年4月1日以降に60歳に到達される方は最大支給率が10%に減額されました)
上記同様、60歳定年前の給与が40万円で再雇用後の給与が20万円に減額した場合、月額3万円(20万円×15%)の給付が受けられます。(2025年4月1日以降は2万円)この給付金は非課税で全額手取り金額となり、確定申告も不要です。ただし、昨年の支給率の低下の先には廃止の可能性もあります。
同日得喪も高年齢雇用継続基本給付金も具体的な手続きは各企業の人事から案内があると思いますが、制度の存在と概要を理解し、条件に合致すればご自身から人事に申し出てみてはいかがでしょうか。