人事労務の「作法」

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159.公的年金制度を維持するための方策

2026年度の公的年金は、昨年の物価、賃金動向を反映した物価スライドにより、国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%引き上げになることが決定しました。これにより、6月支給の年金からは、国民年金の満額受給額で月額1,300円、標準的な夫婦二人世帯の国民年金を含む厚生年金受給額で月額4,495円増額になります。

しかしこの程度の増額では、昨今の物価上昇や賃金変動に比べ充分ではありません。その原因の一つは「マクロ経済スライド」による調整が入っているからです。マクロ経済スライドとは、物価や賃金の上昇をそのまま年金額に反映するのではなく、将来の現役世代の負担が大きくなり過ぎないように「スライド調整率」を差し引いて年金額を調整する仕組みのことです。

そのような中、国民年金の第3号被保険者制度の対象者を狭める方向で検討するという報道が入ってきました。第3号被保険者とは、会社員などの第2号被保険者に扶養される60歳未満の配偶者で、原則として年収130万円未満の方です。

第3号被保険者は昭和61年にできた制度で、以前は強制加入ではなかった専業主婦が、将来自分名義の年金を受け取れるように、夫が厚生年金加入を条件に、妻にも国民年金が支給される仕組みとなったものです。

ところが近年、共働き世帯や女性の就業機会の増加に伴い、第3号被保険者の数が減ってきていることと、いわゆる年収の壁を考慮して働き控えをする人が増えるなどの環境の変化に伴い、第3号被保険者の問題については話題になっていたところです。

年金受給世代にとっては、年金額が物価上昇に追いつかずに結果的に目減りしていることへの不安、現在保険料を負担している現役世代やその配偶者にとっては、新たな保険料の負担増加に伴う不満、更には、将来の年金制度を支える20歳未満の世代にとっては年金制度が維持できるかどうかの不信が付きまとうのは当然のことでしょう。

しかし、日本の年金制度が世代間扶養を前提とした「賦課方式」を採用する以上、確定拠出年金のように自分の年金は自分で用意する「積立方式」とは根本的に考え方が違います。マクロ経済スライドも第3号被保険者の範囲の縮小も、賦課方式の年金制度を維持するための方策なのです。

間違いなく言えることは、公的年金だけに頼るのではなく、自助努力によって老後資金を少しでも用意しておくことでしょう。

 

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