毎年この時期になると、電車内にもオフィスビルのロビーにも新入社員の姿が目立つようになります。
別に、「私は新入社員です」といった名札を付けているわけでもないのに、真新しいスーツに身を包んでいるせいか、立ち振る舞いなど全体の醸し出す雰囲気でそれとわかるのは、筆者が長年人事を経験してきたからでしょうか。
ところが、3ヶ月も経つと、新入社員かどうかの見分けがつかなくなるのも例年の光景です。
そのような中、今年もすでに退職代行サービスを利用して退職する人がいるようです。昨年の退職代行サービス会社の弁護士法違反事件をきっかけに、利用者の声をマスコミで取り上げる機会は減ったように感じますが、実態は変わらないのでしょう。
退職代行サービスの利用の良し悪しは別として、希望を持って入社した若者が早々に退職する現実を、企業側はもっと深刻に考えるべきだと筆者は感じます。
若者が退職を決断する理由で一番多いのは、聞いていた労働条件が実際とは違っていたというものだそうです。例えば、正社員での採用と聞いていたのに、実際は契約社員とか派遣社員だったとかのようなことです。ここまでの相違は企業側の悪意を感じます。
労働者側も口頭での確認だけでなく、労働条件通知書を要求するなど事前に書面で確認すれば防げたかもしれません。そもそも、企業側は労働条件を書面で通知する義務があります。
ここまで重大な契約違反は別としても、配属された部署の上司がパワハラ体質だったというのも退職理由として多いようです。所謂、配属ガチャや上司ガチャのようなものです。
この事象が該当の上司だけの現象なら、労働者が退職を決断する前に会社側に改善を申し入れることを試みるのが先決です。ガバナンス体制が構築できている企業であれば、コンプライアンスの通報窓口があるはずです。新入社員とはいえ、ためらう必要はありません。周りの社員は環境に慣れてしまい、感覚がマヒしている恐れがあります。
企業としても、コストをかけて採用した社員が早期に退職し、コンプライアンス違反が世間に知れ渡ることのリスクは避けたいところですので、新入社員からの声にも耳を傾け、当該上司に対する指導を行うはずです。それが行われなければ退職を決断する時かもしれません。
今は新しい環境に戸惑いながら日々過ごしている新入社員が、3ヶ月後、その環境に慣れ、新入社員と見分けがつかなくなる日がくることを願っています。