前回まで6回にわたり、労働基準監督署による調査の際の準備、心構え、対応方法などについて説明してきました。今回は一連のまとめで締めたいと思います。
労働基準監督署が調査を行い、企業に是正勧告や指導を行う目的は、もちろん法令違反を是正することにありますが、最大の目的は過重労働による健康障害を防止することにあります。このことは、違法な長時間労働が横行し、過労死問題が社会問題化したことをきっかけに、2015年4月に厚生労働省が東京と大阪の労働局内に、「過重労働撲滅特別対策班(通称:かとく)」を設置して取り締まりを強化していることにも表れています。
「かとく」が最初に注目されたのは、某大手量販店の従業員4人に対し、36協定による上限時間79時間を超える最大109時間余りの時間外労働をさせた疑いで、企業と役員、店長2人が書類送検された事件です。この事件では、時間外労働に対する賃金不払いはなく、割増賃金は全額支払われていたにもかかわらず、更には企業や役員だけでなく店長までも書類送検された点で大きな注目を集めました。
このように、労働者の健康障害につながる過重労働に対しては、専門チームが厳しい目で見るようになったことから、一般の労働基準監督署の定期調査でも、労働時間については36協定の範囲内であっても時間をかけて調査されるわけです。
そこで、企業の対策としては、すべての労働者に対して時間外労働を1ヶ月45時間以内に抑えることができれば良いですが、人手不足問題や他社との競争力確保のため、そうもいかない場合もあります。このような状況のときには、長時間労働を可能な限り削減する一方で、労働者の健康障害を防止する方策を合わせて実施することが良いでしょう。
具体的には以下のような取り組みです。
①変形労働時間制の採用による業務の繁忙時期に応じた労働
②フレックタイム制や勤務インターバル制の採用による勤務時間の柔軟化
④医師や保健師による面接指導制度の拡大運用
このような取り組みを行ったうえで長時間労働を削減し、労働者の健康の保持増進に努めるという経営側の意思表示は、労働基準監督署に対してだけでなく、労働者や社会に対しても良いメッセージとなるのです。
これは健康経営そのものであり、労働基準監督署の調査対応を超える次元で、現在の企業に課せられた使命でもあります。