前回、家族手当や住宅手当を中途半端な基準で支給し、残業単価計算基礎から除外すると、是正勧告の対象になることを指摘しました。
少し補足すると、家族手当を残業単価計算基礎から除外するには、扶養家族の有無だけで金額を定めるのではなく、その人数に応じて支給金額を定めなければなりません。同様に住宅手当については、持家や賃貸といった区分で金額を定めるのではなく、住宅ローンの何パーセントとか、家賃の何パーセントといった明確な基準が必要です。(004.住宅手当は支給基準を明確に - 人事労務の「作法」参照)
この点について是正勧告を受けた場合は、6ヶ月程度遡って不足額を支払うように命じられることになるでしょう。
この他、是正勧告を受ける事例としては、労働契約書や労働条件通知書に定めるべき項目が足りていない場合が該当します。
労働基準法第15条では、労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示することが義務付けられています。具体的には以下の事項を「絶対的記載事項」として必ず明示しなければならないとされています。
1.労働契約の期間
2.有期労働契約の更新基準(通算契約期間、更新回数の上限、無期転換の申込機会、無期転換後の労働条件を含む)
3.就業の場所及び従事する業務内容(その変更範囲を含む)
4.始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制のルール
5.賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
6.退職に関する事項(解雇の事由を含む)
これらのうち見落とされがちなのは括弧書きの部分です。2と3の括弧は2024年4月の法改正で追加されたもので、特に3の就業の場所及び業務内容について変更の範囲が記載されていないと、通知した就業の場所の変更(例えば転勤など)や、職種転換を命じることができなくなる場合があります。(095.ジョブ型雇用は定着するのか - 人事労務の「作法」参照)
雇用契約書や労働条件通知書の内容不備を指摘された場合は、速やかに不足事項を追加し、労働者に説明の上、変更した内容で是正報告書を提出しましょう。放置しておくと、労働条件に関してトラブルに発展しないとも限りません。
労働基準監督署の調査で是正勧告を受けた場合は、より良い労働環境を構築するためのアドバイスと前向きに受け止め、改善に努めてください。