人事労務の「作法」

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132.ワークライフバランスを捨てるわけではありません

新しい自民党総裁の発言が注目を集めています。「ワークライフバランスという言葉を捨てる」という発言のことです。

ワークライフバランスとは、直訳すると「仕事と家庭生活の調和」のことで、仕事を最優先して家庭を顧みないとか、逆に仕事は収入を得る手段と割り切って最低限の働きしかせず、趣味や家庭生活を重視するという考えではなく、仕事も家庭生活も調和させましょうという考え方です。つまり、仕事か家庭生活のどちらかを選ぶのではなく、両者が調和することで相乗効果が期待できるということです。

しかしながら、このような働き方については、現在においては違った考え方もあります。

例えば、ジョブ型雇用や裁量労働制の浸透により、成果をより期待される傾向にあり、成果を得るために人一倍努力しなければならない時もあります。特に、若手のうちは労働法を遵守したうえで仕事に没頭する時期があってもよいと思います。

一方で、「静かな退職」も認知されていて、どの世代においても静かな退職を実践している人の割合が4割を超えているという調査もありました。(119.「静かな退職」を放置しないで - 人事労務の「作法」

静かな退職を実践している人には、仕事にやりがいを見いだせない人だけでなく、家庭の事情、例えば親の介護などで仕事よりも家庭を重視せざるを得ない人もいます

このような中で飛び込んできた自民党新総裁の発言に対し、働きたくても家庭の事情で十分に働けない人からは、「私たちにもワークライフバランスを捨てて働けと言うのか」といった反発が出ているのでしょう。

ただ、勘違いしがちなのは、ワークライフバランスは日々の仕事や家庭生活においてだけ、その調和を求めているのではないということです。毎日毎日、あるいは1週間や1ヶ月、場合によっては数年間バランスしていない状態であってもよいのです。

つまり、会社が危機的な状態のときには、何としても会社を存続させるために頑張らなければならない時もあります。親の介護で家庭を重視しなければならない時もあります。職業生活全体において仕事と家庭生活が調和してれば良いのです。

物価高など危機的な日本経済の状況を打破するためには、この時期政治家にはワークライフバランスではなく、新総裁が言う通り仕事に邁進していただくことが正しいのではないでしょうか。

 

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