人事労務の「作法」

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122.「静かな解雇」というのもあります

3回前の記事で「静かな退職」について解説(119.「静かな退職」を放置しないで - 人事労務の「作法」)しましたが、一方「静かな解雇(Quiet Firing)」という現象も起きています。

静かな解雇とは、企業が従業員を正式な手続きを踏んで解雇するのではなく、自主的に退職するように仕向ける行為を指す言葉です。具体的な例としては、以下のようなものです。

・昇進の機会を与えない

・長期間昇給させない

・やりがいの無い仕事を与える

・社内コミュニケーションから排除する

また、静かな解雇のターゲットとなりやすいのは次のような人です。

・相対的に人件費が高く、その人件費に見合う成果が出ていない人

・仕事に対する意欲がなくモチベーションの低い人

・上司や会社の方針に従わない人

・育児や介護などの事情で勤務時間に制限がある人

企業が静かな解雇を行う背景には、やはり解雇という事態は避けたいという思惑があります。解雇が公になると企業の評判が低下する恐れがあります。そもそも、ターゲットとなりやすい人の特徴だけでは解雇に該当するような事象は見られず、無理やり解雇すると不当解雇を訴えられる危険性もあります。

かといって、静かな解雇を極端に実施すると、パワハラとして訴えられることもあります。静かな解雇は、厚生労働省が示すパワハラの6つの類型のうち、「精神的な攻撃」、「人間関係からの切り離し」、「過小な要求」に該当するでしょう。

それでも静かな解雇が注目されている理由の一つには、静かな退職の存在があります。もともと一部の日本企業では、静かな解雇のような行為は実践されていましたが、静かな退職の流行に伴い、企業側の対抗措置として静かな解雇が注目されるようになったわけです。

しかしながら、静かな解雇を実践することは、ターゲットとなっている人だけでなく、周りの従業員に対しても悪影響を及ぼします。自分も同じ目に遭うかもしれないという不安から、企業への信頼感やモチベーションが低下するでしょう。そして、企業への信頼を失った優秀な人材が見切りをつけ、離職する可能性が高まります。結果的に、企業の評判が悪くなり、新しい人材の採用も困難になるという悪循環に陥ります。

やはり、健全な企業運営のためには、正当なコミュニケーションを通じて、従業員と向き合うことが不可欠です。

 

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