人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

118.名選手は名監督になるとは限らない

日本人選手の活躍の影響で、メジャーリーグの試合中継が放映されることが多くなり、筆者も時々見ることがあります。

試合中、日本向けの実況者や解説者が、メジャーリーグの監督には、選手としてはメジャーの経験がない人が多いことを話しているのを聞くことがあります。一方、日本のプロ野球では、選手として優秀な成績を収めた人が監督に就任するケースが多く、日米での風土の違いを感じます。

日本の企業においても同じようなことが言え、例えば営業部門では、優秀な営業成績をあげた人が営業部門のマネージャーに就任することが多く、研究部門で画期的な研究成果を出した人が研究部門のマネージャーに就任することが多いのが特徴です。

また、プロ野球では「ミスター〇〇」といった、そのチーム一筋に活躍した選手は、他のチームの監督に就任することはタブー視されているように、企業においても、営業で活躍した人が研究部門のマネージャーに就任することや、その逆の例も稀です。

しかし、営業で優秀な成績をあげることと、営業部門を率いてメンバーを指導、育成することとは本来別の業務です。研究部門においても同じことです。

では、なぜ日本の企業において、プレイヤーの延長線上に同一部門のマネージャーがあるのでしょうか。

最大の理由は、優秀なプレイヤーとしての知識や経験が、同じ部門の後進の指導に活かせるという思い込みがあるからです。実際に成果を出してきた人の成功体験に基づく指導には説得力があるように思えるのでしょう。

確かにそういう一面はありますが、やはりプレイヤーとしての業務とマネージャーとしての業務では視点が違います。プレイヤーとして優秀だった人は特に、普通の人の感覚が理解できず、一人一人の能力差に応じた指導ができない場合があります。

営業や研究部門に限らず、プレイヤーとして特筆すべき能力を持ったには、引き続きプレイヤーとして最大限の能力を発揮できる環境を用意することが企業としては最善の選択です。優秀なプレイヤーをマネージャーに就けることで、その人のパフォーマンスを低下させては、企業にとって大きな損失です。この辺りは、人事制度の構築においてスペシャリスト職」を設けることで運用可能です。(041.人事制度の構築(8) 複線型人事制度の有効活用 - 人事労務の「作法」

マネージャーには他部門からでもマネジメント能力に長けた人を異動させて配置するのが良いでしょう。名選手は名監督になるとは限らないということです。

 

人事・労務ランキング社会保険労務士ランキング

スポンサーリンク