企業の人事部を舞台にしたTVドラマが最終回を迎えました。
ストーリーの展開はさておき、人事部にフォーカスした今まで類のないドラマだったと感じています。しかし、筆者としては最初から最後まで少し違和感をもって見ていた箇所があります。
過去の記事(110.ドラマで垣間見る人事部の業務 - 人事労務の「作法」)にも書きましたが、人事部の業務は幅が広く、一般的には人事部内の機能に応じて、「人事」と「労務」などの「課」で分けて組織を運営することが多いのです。
もちろん企業規模にもよりますが、ドラマでは部長を除き8人のメンバーがいましたので、組織分化は十分にできる規模でしょう。そしてそれぞれの課には課長もしくは役職はなくともリーダー的な役割の人材が必要です。ドラマを見る限りではそのような立場の人は存在せず、部長以下皆フラットな組織のように見えました。
決してドラマの脚本に文句を言っているわけではなく、これを実際の企業に置き換えて考えると、大きな弊害があります。
まず、人事部内に管理職が部長だけでは、組織運営上支障が出ます。本来人事部長には、採用計画立案、人件費予算策定、人事制度構築といった経営に近い立場での業務が期待されますが、他に管理職がいないと人事部内の各メンバーに対するマネジメント業務が加わります。これでは部長の負担が大きくなりすぎるばかりか、どちらかが疎かになりがちです。通常は、各メンバーのマネジメントは課長などの役割の人が行う業務です。
そして、人事部長が社長に昇進した後の後任の人事部長には、今までマネジメント業務経験のない一般社員が就くことになるわけですが、この人に経営感覚を持った業務は期待できません。どうしても実務感覚の延長で、メンバーのマネジメントを中心とした業務に偏ってしまい、本来部長が行うべき業務は疎かになります。
この構図は過去の記事にある「大課長」問題(080.組織にはびこる「大課長」問題 - 人事労務の「作法」)そのものです。
部長が本来行うべき業務を行わず、課長が行うような業務に終始するのは、組織のマネジメント体制が原因となることもあるのです。一般社員をいきなり部長に抜擢しても、その人に経営感覚を持った業務は期待し難く、やはり段階的にマネジメント経験を積ませていくことが必要なのです。