コメ不足による価格の高騰が続いています。
報道では、コメ特有の流通経路の複雑さに問題があり、更には一部の卸業者が出荷を手控えていることも価格高騰の原因であるとされていますが、基本的に商品の価格は需要と供給のバランスの上で成り立っています。現在はそのバランスが崩れている状態と言えます。
政府はこの異常事態を解消するために、備蓄米を随意契約で放出することで、需給バランスの是正を図っているのは周知のとおりです。
実は、人事の世界でも似たようなことが起きています。
昨今の人手不足によって、初任給を引き上げないと新卒社員が確保できない現象が起きています。もっとも、インフレを上回る賃金の上昇は必要ですが、特に新卒社員の初任給アップは、それとは違い、まさに需給バランスが崩れた状態でしょう。新卒社員に比べ、既存社員の賃金はそれほど上がっていないのは、そういうことです。
しかしながら、人口減少が加速している日本においては、更に労働力人口が減少することは明らかで、その都度初任給を引き上げて新卒社員の奪い合いをしても何の解決にもなりません。そのうちに、体力が尽きた企業が市場から退場するという構図は現実的ではありません。
労働力が減るのであれば、減った労働力で企業が運営できるようなシステムに変革することが必要です。AIの発達により、人の手を介さずとも完結する業務を増やすことがその代表的な方策です。そうすることで、労働力市場における需給バランスの適正化につながります。
とはいえ、足元では人手不足が顕在化しているのは事実であり、これを解消するために政府は「備蓄米の放出」にも似た策をいくつも講じています。
前回の記事に書いた、年金法の改正(113.在職老齢年金制度改正で「あんこが詰まったあんパン」に - 人事労務の「作法」)や、リスキリングを目指した雇用保険法改正(094.雇用保険法の改正はリスキリングのチャンス - 人事労務の「作法」)、更には、現在努力義務とされている60歳代後半の雇用義務化への流れなどで、労働市場に労働力を供給しようとしています。
労働力の需給バランスが安定するまでは、筆者を含めた「ヴィンテージ労働者」の出番なのでしょう。既に再雇用など第一線を離れた人が多いでしょうが、働いてみると意外に遜色ないかもしれません。