しばらくこのテーマから遠ざかっていましたが、前回(101.人事制度の構築(31)賞与の有効活用 - 人事労務の「作法」)は社員のモチベーションを喚起する目的で、賞与を有効活用することを記載しました。
しかしながら、昨今の初任給はじめ月例給与のベースアップに伴い、総額人件費に占める賞与の割合が低下しつつあります。月例給与をアップしてもなお、賞与も今まで通り支給されるほど好業績ならまだしも、一般的には会社業績に応じて総額人件費を賞与で調整するのが通例です。給与規程にも、「会社業績と社員の勤務成績に応じて賞与を支給する場合がある」といったような記載があるでしょう。
ある大手電機メーカーでは、冬の賞与を廃止し給与化するといった報道もあり、他社でも給与と賞与の比率を見直す動きがあります。その狙いは、年収では変わりはなくとも、月例給与を増やすことで採用における競争力を高めることにあります。さらには年俸制の導入や成果主義を強化するため、一律支給の色合いが濃い賞与を減らしたいという思惑もあるのでしょう。
このように肩身が狭くなりつつある賞与だからこそ、限られた原資を社員のモチベーション向上に有効に活用しましょうというのが筆者の考えです。とはいえ、ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」で示す通り、賞与を含む賃金は「衛生要因」であるため、単純にその額だけを追いかけてもモチベーションにつながりません。(108の記事参照108.賃上げ以上に「動機づけ要因」を喚起する取り組みが重要 - 人事労務の「作法」)
賞与の支給総額は、その事業年度における会社業績に連動し、更にはその会社業績を支えた社員の勤務成績の上に成り立っています。このことを考慮すると、会社業績に合わせて賞与の支給総額を算出し、その賞与原資を社員の人事評価に応じて分配する仕組みが良いと考えます。具体的には賞与支給をポイント制とし、職能等級ごと、評価ランクごとに賞与ポイントを設定し、各社員の賞与ポイントに応じて賞与原資を分配する仕組みとします。詳しくは改めて解説します。
人件費に占める賞与のウエイトが減少しつつある今、基本給×〇ヶ月分といった従来の一律支給の方式から脱却し、メリハリある支給でモチベーション向上を図りましょう。