人事労務の「作法」

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111.退職代行サービス利用にはデメリットもあります

ゴールデンウィークが終わり、職場に日常の光景が戻った反面、連休明けから出社できずに退職する社員が出てくるのもこの時期です。特に職場への不満が大きい場合には、退職代行サービスを利用して退職する人が増えているのが最近の特徴です。

人事担当者向けのあるアンケート調査では、退職代行サービスを利用して退職することについて、迷惑だという回答が多かったようです。

退職には退職の意思表示を受けた後、諸々の手続きがあります。それらの手続きまで代行してもらえるならまだしも、退職願の提出だけ代行してもらい、本人との連絡は取れないというのでは、人事担当者としては大変困るでしょう。

例えば会社から貸与しているパソコンやスマホを返却してもらう際に、付属品の電源ケーブルが返却されていなかったり、スマホにロックが掛かったままの状態であったりとかは、対面で退職の手続きを説明する場面でもよくあることです。これらを解消するところまで人事担当者の仕事ですが、それができないというのは確かに迷惑な話です。

逆に退職する社員にとっても不利益なことがあります。

例えば、対面での説明であれば退職後の失業保険や年金、健康保険について、その人の状況に合わせて色々なアドバイスができますが、その機会を得ることができません。また、退職一時金制度がある会社では、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を会社から案内しますが、社員からは提出されないかもしれません。社員はこの書類を提出することで、勤続年数に応じた退職所得控除が受けられ税負担が軽減されますが、提出がないと20%余りの所得税源泉徴収され、税負担が非常に大きくなります。

恐らく、退職する社員はこのようなデメリットがあることを理解しないまま退職代行サービスを利用しているのではないでしょうか。人事担当者はそのあたりの仕組みを理解しているからこそ、非常に迷惑なことと感じるのでしょう。

職場でパワハラが横行しているとか、契約内容が実態に合っていないというのであれば、退職代行サービスを利用する前に相談する先は他にあります。

それよりも、会社と社員が良好なコミュニケーションを図ることができる関係性を構築することの方が重要であることは言うまでもありません。

 

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