人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

109.有給休暇取得はチームワークを重視して

ゴールデンウィーク期間中、各行楽地は観光客で賑わっているようです。

今年は暦の並びの関係で、前半の連休と後半の連休の間の4日間休暇を取得すれば、最大で11連休となります。小売業やサービス業に従事する人は、この時期には休暇は取得しづらいでしょうが、土日が休日の企業でも、一斉休日でない限り、多くの社員が休暇を取得することで通常業務に支障が出る場合もあります。

労働基準法第39条では、有給休暇を「労働者の請求する時季に与えなければならない」とされ、また、2019年4月以降法改正により年間5日以上の有給休暇取得が義務付けられたことも関連し、連休の谷間に休暇を希望する労働者が増えたでしょう。

一方、使用者側には同じく労働基準法第39条で、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができる」とした「時季変更権」が認められています。

しかし、時季変更権の行使はどのような場合にでも認められるとは限らず、注意が必要です。単に業務が多忙な日だからとか、飛び込み業務が入る可能性があるからといった漠然とした理由では時季変更権は行使できないでしょう。

連休の谷間に休暇取得希望者が殺到し、部署全体が空っぽになってしまうとか、代替要員が確保できないとか相応の理由が必要です。

かといって、労働者が予定していた休暇予定日の直前になって時季変更権を行使されても労働者の予定変更が難しい場合もありますので、使用者は予め労働者に対し有給休暇の希望日を聴取し、聴取した希望を尊重して時季指定をするという本来の流れを確立しておく必要があります。

また、労働者側も、自身が有給休暇を取得することでしわ寄せが起きるであろう他の労働者に対して、事前に業務の申し送りを行うなどの配慮が必要です。

ジョブ型雇用や成果主義の浸透により、自身の業務と他人の業務の境界線が明確になり、他人の業務に無関心になりつつありますが、休暇を通して日本企業のチームワークの良さを実感する瞬間です。そして休暇明けには周囲にお土産を配る光景も、日本企業の風習として大事にしたいものです。

 

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