人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

108.賃上げ以上に「動機づけ要因」を喚起する取り組みが重要

初任給を引き上げる動きが加速しています。

初任給に限らず、社員にとっては給与は高いに越したことはありませんが、給与を上げても退職者が減らないとか、エンゲージメントが高まらないと悩んでいる経営者の方はいないでしょうか。特に中小企業の場合、大企業に比べて資金力、収益力に劣る中で、人材確保のために思い切って初任給を引き上げても、採用した人材が定着しなければ、そのダメージは大きいでしょう。

そもそも給与を上げればモチベーションが高まり、社員が意欲的に働くようになると考えているのなら、それは間違いです。

アメリカの心理学者、フレデリック・ハーズバーグが唱えた「動機づけ・衛生理論」では、仕事に関する特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるのというのではなく、満足をもたらす要因(動機づけ要因)と不満をもたらす要因(衛生要因)は別のものであるというものです。

動機づけ要因は、満たされないからと言ってすぐに不満が出るものではなく、逆に満たされるとモチベーションが高まるものを指します。具体的には、仕事の達成感や承認されること、あるいはやりがいのある仕事そのものが動機づけ要因です。

一方、衛生要因は、満たされないと不満が出るが、満たされたからと言って満足にはつながらないものを指します。単に不満を予防するだけの要因です。具体的には、空調や照明などの職務環境、上司との人間関係、福利厚生などです。そして給与も衛生要因に該当します。

つまり、給与が低いと不満が出るが、給与を上げたからと言って不満は解消できてもモチベーションの向上にはつながらないということです。賃上げを行うならば、このことを理解たうえでないと、期待した効果が得られなくなります。

競合他社との競争力を担保するためには、可能な範囲での賃上げは必要ですが、賃上げ以上に必要なのは動機づけ要因を喚起する取り組みです。少し背伸びした目標を与え、それを達成することができれば、上司が自分のことのように喜び承認し、新たに更にやりがいのある仕事を与えるというサイクルです。

目標達成の報酬は、金銭的な報酬だけでなく、新たなやりがいのある仕事の方が重要なのです。

 

人事・労務ランキング社会保険労務士ランキング

スポンサーリンク