人事労務の「作法」

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097.年功重視の賃金制度復活?

最近、気になる記事を見つけました。

ある調査では、賃金を決定する要素として個人の業績や成果を重視する割合が伸び悩んでいる一方で、年齢や勤続を重視する割合が増えているというものです。これだけを見ると、成果主義が衰退し、その反動で年功重視の賃金制度が復活しているようにも受け取られがちですが、そんなに単純な話ではないでしょう。

成果主義が注目され始めたのは、大手電機メーカーに代表されるように、1990年代のバブル崩壊以降、業績悪化の打開策として年功よりも成果を重視した処遇に切り替えたことから各社に広まったものです。

ところが、極端な成果主義は、成果に至る過程よりも結果を重視したり、チームプレーを阻害したりといった、本来日本企業が得意とする、つまり戦後の日本企業が成長してきた肝の部分を放棄したことによって、逆に業績が悪化し、各社成果主義を見直している段階です。

では、このことと年功重視の処遇への逆戻りはどのような関係があるのだろうか。

一部で指摘されている通り、行き過ぎた成果主義には弊害はあるものの、配置転換を繰り返しながら勤続を重ねることで、その企業でしか通用しないゼネラリストを育成する従来の人材マネジメントの仕組みでは、国際的な競争力を確保することはできません。新卒一括採用したとしても、希望や適性に応じて特定の分野のスペシャリストを育成する人材マネジメントシステムに転換する必要があります。

このことは、近年広がりを見せてきている新卒のジョブ型雇用にも通じます。本来、ジョブ型雇用は即戦力を中途採用する際の雇用形態ですが、イメージの良さから新卒にも広がってきています。

しかし、学生時代に産学共同で専門的な研究を行ってきたような一部の学生を除き、例えば法学部で企業法務を学んだからと言って上場企業の法務部で即戦力として働けるとは思えません。ただし、企業としてはこのような社員は法務の知識の素地があることから、あえて他の部門への異動はせず法務部門で育成していく選択をします。

つまりは、新卒でジョブ型雇用した社員を育成していく過程では、勤続を重ねるにつれて知識経験が増し、自然と賃金もアップしていく仕組みになっていくのでしょう。ジョブ型雇用が新卒に浸透した影響で、年功重視の処遇が復活してきたように見えているのだと思います。

 

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