人事労務の「作法」

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089.定年再雇用か定年延長か

ある大手都市銀行では、定年再雇用者の賃金を最大4割上げ、年収1000万円も可能とする制度を導入するという新聞報道がありました。この銀行では元々定年は60歳であり、今回は定年年齢は変更せず、1年ごとの再雇用契約を締結する際に評価に応じて処遇を決定するのでしょう。

一方、ある大手ハウスメーカーでは、定年年齢を65歳か67歳かのどちらにするかを社員が選択できる制度を導入するという報道もありました。この企業はすでに65歳定年を導入していて、更に定年を延長する取り組みです。

現在の法律では、定年は60歳以上とすることが義務付けられていて、その先は再雇用制度や定年延長などで65歳までの雇用義務と、70歳までの雇用努力義務が定められています。一昔前までは60歳定年と、定年後は処遇が3~4割減った状態で65歳までの再雇用という仕組みが主流でしたが、最近はこのように企業によって色々な取り組みが見られます。

今回の2社の取り組みに限らず、背景には人手不足という問題があり、経験豊かなベテラン社員を有効に活用しようという狙いがあります。ただし、処遇に差はないとしても、60歳で社員の身分を失うのと、65歳(あるいはそれ以上)まで社員でいるのとではその人の意識が違ってきます。

定年後に再雇用の身分となると、少し会社と距離を置いた第三者的な見方をしがちです。今まで当たり前のように考えていたことが、冷静な目で見て違った判断ができることもあります。それが良い方向に向く場合もありますが、逆に、非現実的な理想論を唱えているだけと受け取られることもあるでしょう。

逆に65歳以降も社員の立場にいると、第一線で長く活躍できる喜びと同時に身体的には負担に感じる場合もあるでしょう。

結局は60歳定年後70歳までの再雇用が良いのか、70歳近くまで正社員でいるのが良いのかは一概には言えず、その人の仕事に対する意識、私生活との関係、更には健康状態等を考慮して各々が選択できる仕組みとすることが良いと考えます。大学を卒業してからカウントすると、40年前後働いてきていますので、最後の着地の仕方は自分で決めたいものです。

先に挙げた2社についても、報道では一部しか紹介されていませんが、そのあたりの細やかな仕組みも当然織り込まれていると思います。何となく筆者自身に置き換えて考えたくなる報道でした。

 

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