103万円の壁の引き上げが国会で駆け引きされている中、一足早く106万円の壁の撤廃が決まりそうです。
106万円の壁とは、085の記事で紹介した通り、社会保険に関する壁で、従業員51人以上の企業で週20時間以上働く労働者が健康保険や厚生年金に加入することになる年収基準です。このうち撤廃される要件は、2026年10月に年収基準、2027年10月に従業員規模の要件で、週20時間以上働くという要件は継続されます。
新たに社会保険に加入することになると、例えば年収106万円の人は年間約15万円の社会保険料負担が増え、103万円の壁で国民民主党がこだわっている「手取りを増やす」政策に逆行するという意見もあります。
しかし、必ずしもそうではありません。
週20時間働いて年収106万円とは、月当たり約88,000円で、時給に換算すると約1,026円(88,000÷30×7÷20)です。この1,026円という数字は、2024年の最低賃金全国平均である1,055円を下回っています。つまり、全国平均では週20時間以上働く人は年収106万円以上得ていて、従業員51人以上の企業ではすでに健康保険や厚生年金に加入しているというわけです。
ただし、都道府県によっては1,026円は最低賃金を上回る地域もあり、例えば最も低い秋田県の951円とでは75円の差があります。しかしこの差も昨今の最低賃金の伸び率(直近では平均5.1%アップ)が継続すれば、2年で1,026円を上回ります。106万円の壁を撤廃するのが2026年10月の予定ですので、この最低賃金との関係も考慮しているのでしょう。
それでも、従業員規模の撤廃で新たに社会保険に加入することになれば手取り収入が減りますが、その対応として、2026年4月から、本来、会社と社員が折半負担する保険料を、会社負担の割合を増やす特例も用意されるようです。
また、厚生年金に加入することで、将来、基礎年金に加えて厚生年金が支給されます。支給される年金は、老齢年金の他、障害年金や遺族年金も支給される可能性があります。さらに健康保険からも、病気やけがにより働けなくなって、収入が得られない場合には、傷病手当金が支給される場合もあります。
106万円の壁は撤廃には、負担増の見返りとして様々な給付があることも確かです。