人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

086.ストレスチェック制度を有効に活用しましょう

労働安全衛生法改正により、労働者50人以上の事業所に対し、2015年12月より1年以内ごとに毎年ストレスチェックの実施が義務付けられています。義務化以降10年近く実施するうちに、各企業においては毎年の定例行事と化し、その結果が有効活用されていない可能性があります。

ストレスチェック制度の目的は、労働者が自らのストレスへの気づきを促進することと、企業側がストレスの原因となる職場環境の改善につなげることの二点にあります。

このうち一点目の労働者自身のストレスへの気づきについては、労働者自身がセルフケアを心掛け、実施者である産業医保健師なども積極的に働きかけを行い、面談を行う流れは定着してきていると思います。

一方、二点目の目的については、企業は誰が高ストレスかということは把握できず、実施者から提供される部署ごとの受検率や高ストレス者率のパーセントと、その率が経年的に増えているのか減っているのかといった情報を収集するに留まりがちです。よって、これだけでは職場環境の改善にはつなげられません。

労働安全衛生規則第52条の14第1項では、事業者はストレスチェック実施者に対し、ストレスチェックの結果を部署などの労働者の集団ごとに集計させ、その結果を分析させるように努めなければならないと定めています。これが「集団分析」というものです。

下は、厚生労働省の「ストレスチェック制度導入ガイド」掲載の集団分析のサンプルです。

左は「量ーコントロール度判定図」で、仕事の量的負荷が高くコントロール度が低い右下のエリアにプロットされるほど高ストレスと判定されます。右は「職場の支援判定図」で、上司や同僚の支援が共に少ない左下のエリアにプロットされるほど高ストレスと判定されます。

上のサンプルは職種による分析ですが、これを部署別や年齢別、男女別等で同じように分析すると、各分類ごとの特性が見えてきます。ストレスチェックの質問項目は57問の単純な質問ですが、思った以上に特徴が表れるものです。

ストレスチェック後の集団分析で、特定の部署や職種に高ストレスの傾向が見られた場合は、その原因が仕事の量なのかコントロールの無さなのか、あるいは上司や同僚の支援がなく孤立しているのかといった事情が明らかになります。

ストレスチェックの結果を有効に活用し、職場環境の改善につなげましょう。

 

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