人事労務の「作法」

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081.大課長問題は「ピーターの法則」で回避を

前回、大課長問題には「ピーターの法則」が有効であることを述べました。そこで今回は、ピーターの法則について考えます。

皆さんの会社の中で、次のような事象に心当たりはありませんか。

営業成績が優秀な営業課長のAさんが営業部長に昇進し、部全体の営業成績向上を期待されていたが、期待に反し成績は向上せず下降したケース。あるいは、次期社長と期待されていた経理部長のBさんが役員に昇進したが、他の役員や社員からの信頼を得られずに社長候補から外れてしまったケース。

これらの事象は、ピーターの法則によって説明できます。

ピーターの法則とは、アメリカの教育学者であるローレンス・J・ピーターによって提唱された社会学の法則で、能力主義の階層組織においては、いくら有能な人材であっても、昇進を重ねるうちに、いずれは能力の限界に達し、能力以上の職位に就くことで無能化してしまうという法則です。

先の例では営業部長として能力を発揮できなかったAさんの能力レベルは営業課長までで、営業部長になると能力の限界を超えて無能化したのです。同じように社長候補から外れたBさんの能力レベルは経理部長までで、役員になった途端に無能と化したのです。

ピーターによると、あらゆる職位は職責を果たせない無能な人によって占められ、仕事はまだ無能レベルに達していない人によって行われているとされています。

非常に大胆な思考ではありますが、「なるほど」と納得させられてしまう部分もあります。

営業部長の例では、課長時代は行動力と説得力で主力商品の営業に力を入れてきましたが、部長になっても同じ思考のままでいたのです。市場のニーズの変化を読み取る思考が欠けていたのです。役員の例では、経理部長時代は経営レベルでの計数感覚を持っていましたが、現場を理解せずに数値を優先する姿勢だったため、周囲の信頼を得られなかったのです。

ピーターの法則が真実だとすれば、誰しも無能レベルに達したくないものです。ただし、少なくともピーターの法則の存在を知っていて、今自分がどのレベルにいるのかを理解することで、先の二つの例や前回の大課長問題を回避できるでしょう。

昇進させる人は今の職位で有能な人ではなく、昇進後も有能であり続けることができる人です。そして、昇進後、無能化していると判明すれば、降格させることがその人が有能であり続けるためには必要ということでしょう。

 

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