人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

080.組織にはびこる「大課長」問題

最近、多くの企業で「大課長」問題が発生しているようです。

大課長問題とは、部長や本部長が課長と同じような仕事をしていることを指します。課長の仕事といえば、短期の業績や成果を向上させることに注力し、そのために課内で先頭に立って、メンバーに具体的な指導を行いながら自らも業績や成果を追う役割です。プレイングマネージャーという言葉が一番似合う役職でしょう。

このような課長の仕事を、部長や本部長も一緒になって追いかけていく組織の行方に危うさを感じます。

大課長問題の弊害は、多重管理に陥り、報告業務などの社内調整が増えることにあります。毎月の業績など、課長が部長に報告し、更に部長が本部長に報告するといったことが起きます。また、本部長や部長が具体的な業務の進め方に口を出し、現場が混乱することもあります。その結果、社員の目は社内の上役の方向を向くようになり、顧客の方向を向かなくなってしまいます。

部長の仕事は将来を見据えた部門の運営であり、そのために人、モノ、金といった経営資源を適正に投入し、長期的に組織を発展させることにあります。課長のように短期的な成果を追ったり、具体的な業務に口出しすることではありません。部内の社員が効率良く生き生きと働くことができる仕組みや環境を用意することが役割です。さらに本部長となると役員クラスでしょうから、企業の経営そのものが、求められる役割です。

大課長が増えている背景には、課長としての成果が大きい人を部長に昇進させる日本企業の風土が関係しています。課長として短期的な成果を上げてきた人が部長になっても、やはり短期的な成果を追うでしょう。さらにその人が本部長になっても同じことです。課長時代に優秀だった部長や本部長は、今の課長の仕事ぶりに不満があり、報告を求めたり、細かなことに口出しするのです。

部長に昇進させるのは優秀な課長ではなく、部長の仕事を理解して全うできる人でなければならないのです。このことは「ピーターの法則」によって説明できます。ピーターの法則は非常に面白い理論ですので、改めて解説します。

 

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