人事労務の「作法」

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078.「ブレジャー」導入は慎重に

新しい働き方、また余暇の過ごし方として、「ブレジャー」が注目されています。

ブレジャー(Bleisure)とは、仕事(Business)と余暇(Leisure)を組み合わせた造語で、「出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむこと」と観光庁などは定義しています。

日本では出張先での業務が終了すれば、寄り道せずに帰路に就くのが一般的と考えられていますが、欧米では出張のついでに観光をするスタイルは当たり前のように取り入れられているようです。日本でも、日ごろ休暇を取りづらい多忙な従業員にリフレッシュの機会を与え、モチベーションやエンゲージメントの向上効果を狙う動きとして最近注目されています。

しかしながら、取り扱いを詳細にルール化しないまま導入することは危険です。

一つは旅費の負担の問題です。通常の出張だけの場合は、当然会社が宿泊費と往復の交通費を負担するでしょう。ところが、出張終了後に観光のため別途宿泊費と交通費が発生した場合は、会社がどこまで負担するのかを事前にルール化しておく必要があります。例えば宿泊費は個人負担としても、交通費については元々出張の復路として会社負担の予定ですので、以下のような扱いが考えられます。

①観光のための交通費は全額会社で負担する

②通常の復路の金額を上限に会社負担する

③通常の復路の経路に沿った場所まで会社負担する

④復路の交通費は会社負担しない

また、労災問題についても考慮する必要があります。通常の出張であれば移動中の事故は労災対象ですが、途中で私的行為があればその間は労災対象外です。ブレジャーは業務と私的行為との境界が曖昧にになりがちです。

更に、福利厚生の一環としてブレジャーを導入する場合、その恩恵を得るのは営業職や全国各地の支店などを巡回するような業務に就く労働者です。管理部門でデスクワークが中心の労働者などは出張の機会すらないかもしれません。

これらのことを考えると、ブレジャーの導入には慎重にならざるを得ず、仮に導入するにしても、復路の交通費は会社負担しない(上記④)対応とし、あくまでも出張は一旦終了しているということを明確にした方が、労災問題や労働者間の公平性の観点からも適切だと考えます。

 

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