今回は月例給与のうち、基本給以外の諸手当について考えます。
諸手当は、時間外労働手当や休日労働手当などの法律で支払いが義務付けられたもの以外は、企業が独自に支給の有無を決定できます。それだけに、それぞれの企業の思想が反映されやすい部分ですが、「人事制度の構築(21)」で述べたように、できるだけシンプルに最低限の支給としたほうが良いでしょう。一度支給すると、企業の都合で一方的に廃止したり減額したりはできないこともすでに述べたとおりです。
諸手当は技能手当や精皆勤手当などの仕事給的手当と、家族手当や住宅手当などの生活給的手当に分けることができます。このうち、仕事給的手当は基本給である職能給に組み込み、諸手当は生活給的手当に限定するのが良いでしょう。
では、生活給的手当のうちどの手当を支給するかですが、少なくとも割増賃金の算定基礎から除外できる手当に限定しましょう。割増賃金の算定基礎から除外できる手当は、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われる賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類です。
ただし、これらの手当であっても、支給基準が明確でないと割増賃金の算定基礎から除外できません。例えば家族手当であれば、扶養家族1名につき5千円といった基準は良いですが、扶養家族の人数にかかわらず一律1万円というのは駄目です。また、住宅手当であれば家賃やローン月額の10%という基準は良いですが、持家の人は1万円、賃貸の人は5千円といった基準では駄目です。
支給基準を満たさない場合は割増賃金の算定に含めなければならず、仮に同期入社で能力も成果も同程度で基本給も同額である二人のうち、一人は扶養家族がいて家族手当を一律金額で支給されているが、もう一人は扶養家族がいないために家族手当不支給のケースでは、扶養家族がいる人の方が同じ時間残業しても、残業手当の額が多くなるという不合理な状態となります。
諸手当は福利厚生的な意味を持ちますが、賃金は労働の対価であるという原則に基づくと、諸手当を充実させるよりも、基本給である職能給でメリハリを付けて処遇することの方が、モチベーションを喚起するうえでは重要であると考えています。