人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

075.人事制度の構築(23) 基本給は2階建に

今回も基本給の構成について解説します。

基本給は職能給が中心であることは間違いないところです。ただし、基本給を職能給一本で構成すると不都合な事もあります。 仕事給である職能給に加え、属人給的な部分も一定程度設けるのが良いという事までは前回記載しました。

属人給の代表的なものは年齢給です。年齢に応じて家族が増え、出費が嵩むという考えに基づき、年齢の上昇につれて逓増させた金額を支給するものです。

もう一つは勤続給です。勤続年数が増えるにつれて能力が向上するという考えの基で、こちらも逓増させた金額が支給されます。

しかしながら、これらの属人給は終身雇用や年功序列を前提とした賃金であり、現在の能力や成果を重視した人事制度には馴染まないものです。特に優秀な若者にとっては、「働かないおじさん」の象徴であるこれらの属人給は不満の的となります。

そこで、これらの属人給に替えて、全社員一律金額の「基礎生活給」を導入することを提案します。基礎生活給とは、年齢や勤続、家族構成に関係なく労働者が最低限の生活を送るのに必要な賃金と位置付けて支給するものです。金額は1時間あたりの最低賃金の全国平均約1,000円に、1ヶ月の所定労働時間約160時間を掛けた月額160,000円程度が妥当です。

つまり、基本給を基礎生活給と職能給の2階建とし、人事評価において職能給部分だけを昇給、昇格させるのです。

基礎生活給を導入するメリットは、ベースアップに対応しやすいということです。昨今のベースアップ機運の高まりの背景には、物価上昇への対応という意味合いがあります。基礎生活給の額は最低賃金をその根拠としていますので、物価上昇に伴うベースアップとの親和性は高く、説明は容易です。

一方で、職能給は能力の高さに応じて支給されるものですので、能力の向上とは関わりのないところでの物価上昇に対し、職能給のベースアップはし難いものです。職能給のテーブルを改定するには、能力要件の変更が伴うのが本来の姿です。

基本給はその企業の思想を反映した構成とするべきものです。それだけに、どうすれば昇給するかを示すだけでなく、社会情勢にも柔軟に対応できる構成とする事で、労働者に対する企業の姿勢を示して、働く意欲を喚起することが重要です。

 

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