日本企業の慣行として、8月のお盆の時期に「夏休み」を設けることが一般的です。ただし、休みの設定の仕方によって、同じ時間働いても賃金に差が出ることがあります。それには、「休日」と「休暇」の違いを正しく理解する必要があります。
休日とは労働の義務がない日を指します。逆に労働日は労働の義務がある日です。休日は労働基準法第35条で、原則として毎週1日以上与えなければならないとされており、この休日を「法定休日」といいます。一般的には日曜日が該当します。
法定休日以外に会社が就業規則等で定めた休日は「所定休日」といい、一般的には土曜日や国民の祝日などが該当します。
一方、休暇とはもともとは労働日だが労働の義務が免除された日のことです。年次有給休暇や慶弔の際の特別休暇などが該当します。
休日と休暇ではこのような違いがあり、その違いによって残業代の単価が変わります。というのは、1時間当たりの残業単価は、月給制の場合、月の給与額(基本給+一部の手当)を月の平均所定労働時間で割って算出します。ここで、月の平均所定労働時間は、(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12で算出します。つまり、年間休日が多いほど残業単価が大きくなり、同じ時間残業しても残業代が多くなるという流れです。
よって、夏休みや年末年始の休みを休日とするか休暇とするかによって、残業代に影響が出るという仕組みです。企業としては、休暇とした方が残業代を削減できますが、単に名称だけの問題ではありません。
夏季休暇として毎年8月13日~15日を全社一斉の夏休みと定めたなら、名称は休暇であっても実態は休日となります。休暇として年間休日日数から除外するためには、日程を固定せず、7月21日~8月31日までの間で各自の希望により3日間取得するという規定にしておけば間違いありません。選択制にした方がワークライフバランスにも貢献できます。ただし、すでに夏休みを休日に設定している場合、休暇に変更して残業単価を下げるのは一方的な不利益変更になりますので、別途対策が必要です。