人事労務の「作法」

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065.試用期間満了後の本採用ルールを明確に

4月入社の新卒社員の試用期間が満了する頃ではないでしょうか。試用期間とは、応募書類や面接では見極めきれなかった社員の適性や能力を、一定期間働いてもらったうえで本採用するかどうかを判断するための期間です。

試用期間についての法的な制限はありませんので、会社が独自にルールを設定できますが、それだけにトラブルも多い事項です。かと言って無条件に本採用したのでは、将来にわたり問題を抱えることになります。就業規則で明確に基準を定め、運用するようにしましょう。

試用期間の長さについては、一般的には3ヶ月〜6ヶ月が妥当でしょう。短過ぎると適性が判断できず、長過ぎると合理性を欠いてしまいます。

試用期間中であっても、適性が無いと判断しても簡単に解雇できる訳ではありません。試用期間中は「解雇権留保付労働契約」を締結した状態であり、 通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められていますが、それでも社会通念上相当な理由がなければ、解雇は権利の濫用とみなされます。仮に相当な理由があり、解雇する場合でも、採用後14日を超えて雇用していれば、 30日以上前に解雇する旨を予告するか、30日分の平均賃金により計算した解雇予告手当を支給する必要があります。

そこで、試用期間が経過し本採用するかどうかにあたってのトラブルを避けるため、企業は以下のような対応が必要です。

先ず、採用選考過程において適性や能力を見極めることです。適性検査を実施することはもちろん、それ以外にも積極的にインターンを受け入れ、模擬就業させるのも効果的です。

それでも本採用できない次元の社員がいた場合に備え、解雇が有効と判断されるための用意も必要です。重要なのは、就業規則において試用期間後の本採用取消事由を明記することです。法令や規則、上司の指示の遵守、公私の別や守秘義務などの倫理性、経歴詐称や反社との関係などの問題等、社員にふさわしくない事象を列挙します。併せて、問題となる言動が見られれば、早い段階で指導してその記録を残しておきましょう。指導したにも関わらず改善されていなければ、解雇の理由となり得ます。

万が一当初の試用期間内に本採用の可否が判断できない場合は、試用期間を延長するという手段もあります。この場合も就業規則に定め、該当者には事前に通知が必要です。

問題がありながらも本採用すると、その後の解雇は一層に難しくなりますので、事前に準備をしておきましょう。

 

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