偶数月の15日は、2ヶ月に一度の年金支給日です。年金の支給は前月分と前々月分ですので、今回は2024年の4月分と5月分です。
年金額は賃金や物価の変動率に応じて、毎年4月に年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」という仕組みを導入しています。このとき、賃金や物価の上昇をそのまま年金額に反映すると、将来の現役世代の負担が大きくなるので、年金制度の維持を目的に、一定の「スライド調整率」を差し引いて年金の給付水準を調整します。
例えば、賃金や物価の上昇率が大きいときは、そこからスライド調整率を差し引いて年金額の改定率が決まります。賃金や物価の上昇率が小さいときは、スライド調整率を差し引くとマイナスになってしまう場合は年金額は改定せず現状のままとなります。賃金や物価が下落したときは、スライド調整は行わず賃金や物価の下落分のみ年金額が引き下げられます。
2024年度においては、賃金変動率3.1%を基準にスライド調整率0.4%を減じて、2.7%アップした年金が4月分から支給されています。全国民共通の基礎年金の場合、満額で昨年度よりも月額1,750円多くなります。このように年金額を増やすには、企業が積極的に賃上げを行い、経済を循環させることが要件となります。つまりは人事制度の出番です。
会社員の場合、基礎年金に加え厚生年金が支給されますので、自営業者に比べて恵まれていますが、それでも年金だけで生活できる世帯は少ないでしょう。企業においては、65歳以降も働ける環境を用意することで、年金を増やすだけでなく、年金だけに頼る期間を短縮することも可能です。
最近のニュースによると、厚生年金の繰り下げ受給の利用者は2%にとどまっているそうです。マスコミにも頻繁に取り上げられ、制度を知っている人の割合が70%を超えているのにこの利用率の低さは意外です。現在、70歳雇用が努力義務化されていますが、実際に70歳まで雇用されているのは20%程度の模様です。70歳雇用が当たり前になれば、年金額を増やす手段として繰り下げ受給も増えてくるでしょう。ここでも年金額を増やすポイントは人事制度にあるといっても過言ではありません。