今回は、人事評価の四つめの要素である「情意」について考察します。
情意とは、仕事に対する取り組み姿勢や勤務態度、意欲といった心の持ち方を意味します。今まで論じてきた評価要素である能力、行動、成果はこの情意の上に成り立っていると言っても過言ではありません。能力を高めて行動に移し、成果を得るには地道な努力が必要と考える日本的経営に根付いた要素です。
一方で、情意評価は能力や行動、成果の評価に比べ、評価者の主観が入り込みやすくなります。050の記事に記載した通り、評価者エラーに陥らないよう注意が必要です。
また、近年の成果主義の台頭により、情意評価を廃止する動きもあります。どれだけ真面目に頑張ったかではなく、成果が出たかどうかが重要という理由からです。しかし、人事評価が人材育成を目的とするものであることを考えると、情意評価は長期的な視点では人間力を高める効果があると考えています。筆者が主張する能力成果主義による人事制度を展開するうえでも、是非取り入れたい要素です。
情意評価の項目は一般的には次の4項目です。
1.規律性
規程やルールを正しく理解して、業務を行っているかを表す指標です。例えば、勤怠に関するルール、コンプライアンスに関わる事項を遵守できているかなどが該当します。
2.積極性
受け身ではなく積極的に行動しているかを表す指標です。指示された業務をこなすだけでなく、自ら課題を見つけ、改善する積極性があるかを見ます。
3.責任性
与えられた業務を責任持って最後までやり遂げているかを表す指標です。管理職であれば、メンバーに指示をし、適切にフォローしているかも含みます。
4.協調性
他者とコミュニケーションが取れているかを表す指標です。自身の考えだけにこだわらず、他者と対等に議論し、協調する姿勢があるかを見ます。
このように、情意評価は直ちに会社の業績につながる指標ではありません。しかしながら、数字には表れない人間力向上に寄与するものであり、人事評価を通じて人材育成を行うためにも重視したい評価要素と言えます。