前回、メンタル不調からの復職に向けての理想的な手順(127.メンタル不調からの復職 - 人事労務の「作法」)について示しました。しかし、このように順調に事が運ぶことは稀で、各段階でいろいろな予期せぬ事象が起きます。今回はそのような事象について示します。
先ず、休職中に人事から様子伺いのメールをしても、直ぐには返信はありません。あまり急かしてもかえってプレッシャーになるので、「体調の良いときに様子をお知らせください」としても、返信がないことが多いです。
そのうち休職期間の満了時期が近づき、復職できるのかできないのかを見極める段階が来ます。復職できないのであれば残念ながら退職となりますが、復職できるのなら前回示したような段取りがあるので、その段取りを連絡しますが返信がないまま、いよいよ退職の案内をしなければと考えていた頃に、突然、診断書が送られてきます。
診断書の内容は、休職期間の満了日に合わせて「復職可能と判断する。ただし、当初2週間は1日5時間程度の短時間勤務とし、軽作業から始めることが望ましい。」といった制限が付いたものです。
同時に社員から連絡があり、上司と人事による面談を申し入れますが、上司の同席を渋ります。聞くと、メンタル不調の原因がその上司との関係にあるとのことなので、とりあえず人事単独で面談します。
面談する限りでは不調そうには見えず、産業医に事情を説明し面談してもらいますが、産業医も同じような感覚です。このような状況で復職を拒否する理由は見当たらず、関係者との協議の上復職を許可します。
ただし、規程上、私傷病を理由にした短時間勤務の制度はなく期限を定めて特例的に短時間勤務を認めることにします。また、元の上司との接触がないように、他の部署やチームへの異動を検討します。
休職期間満了間近にこれらを急いで対応することになります。
以上は極端な例ですが、メンタル不調からの復職に当たっては予期せぬ事象が起きることを前提に考えておいた方が良いでしょう。逆に言うと、会社の事情を優先的に考えるのではく、メンタル不調で休職している社員に寄り添った対応を優先すべきです。会社の事情に配慮する余裕がないからこそ、メンタル不調で苦しんでいるのです。
次回は、このような予期せぬ事象への対応方法について解説します。
